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営業の定石論

ソリューション営業と「御用聞き」からのパラダイムシフト

ソリューション営業

ソリューション営業』をスローガンに掲げ、営業部隊を築いている企業も少なくありません。
しかしながら、一方ではこんな声も聞こえてきます。
「普通の営業のやり方と何が違うの?」
「要するに提案営業と一緒でしょ?」
「うちの営業ってソリューション型なのかな?」など…
今一つ「?」という方もおられるのではないでしょうか?

そのようなことで、今回はコンサルティング事業を生業とする当社の視点で、ソリューション営業の基本的な考え方や手法などについてひも解いてみましょう。

「御用聞き営業」との違いで見えてくる!?

当社では、長年、様々な企業や団体向けにカスタムプログラムの営業研修をご提供してきました。その中で「ソリューション営業をカリキュラムに入れてほしい」という依頼が多いのも事実です。

そこで、実際に研修に参加する受講生に、「ソリューションって何ですか?」と問いかけしてみると、大半は「問題解決です」と答えてくれます。
そうすると、ソリューション営業とは「問題(課題)を解決する営業」ということになります。
続けて、「では、問題(課題)を解決する営業とは実際に何をするんですか?」と突き詰めていくと、やがて「???」となってしまいます。

このようにソリューション営業とは、漠然と理解はしているものの「現場で活用していくイメージまで掴み切れていない」と言うのが実情ではないでしょうか。
そこで、よりソリューション営業の実像を掴むために有効な手立てとなるのが、「御用聞き営業」との対比と言うわけです。

「うちの営業は、御用聞きだから困ったもんですよ。」
これは、企業のトップや営業管理者の皆さんが、よく私たちに訴えてくる言葉です。
では、御用聞き営業だと何がいけないのでしょうか?
「御用聞き」は日本では、古くから定着している伝統的スタイルのコミュニケーションです。昭和生まれ?の方でしたら、子供のころに酒屋のお兄さんが定期的に家に来ていた姿を思い出すかもしれませんね。

「奥さん!今日は何か入用ありますか?」
「う~ん、今は特に間に合ってるわ~」
「じぁあ、また何かありましたらお願いしま~す!」

このような会話だったでしょうか。

どこか、ホノボノする昭和の光景を思い出してしまいそうですが、懐かしんでばかりではいけませんので早速、この光景をコンサルタント的に分析してみることにします。

まず、酒屋さんとの会話を別の言葉に置き換えてみるとこんな感じになります。

「奥さん!顕在化しているニーズは何かありますか?」
「う~ん、今は特にニーズを感じていないわね~」
「じゃあ、ニーズが出ましたらお願いしま~す!」

どうでしょう?上記の会話から何か掴み取れましたか?
では、もう少しコンサルタントらしく(?)掘り下げてみましょう。

まず、登場人物2人のうち「主体は誰か?」を考えてみます。
これは、明らかにお客さん(奥さん)であることがわかりますね。

そうすると、酒屋のお兄さんは「受動的」に自然と物事を受け止めています。つまり、お客さん(奥さん)が自らニーズを感じて、初めて商売ができる形になります。
これが、御用聞きの基本スタイルと言って良いでしょう。

しかし、逆に考えれば「ニーズがなければ、いつまでも商売ができない!」ということになりますので、酒屋さんは経営的に大丈夫なのでしょうか。
考えてみれば、昔の酒屋さん(今も?)は、お酒はもちろんですが、醤油などの調味料のほか、乾物、飲料など様々な商品を扱っているちょっとした「コンビニ的機能」を兼ね備えています。

そうすると、今日ニーズがなくても、明日には何かのニーズが発生することが十分考えられます。「ニーズ待ち」の状態でも商売が成り立つシステムであれば、何も否定するものでありません。

しかし、これを現在の企業に置き換え、激しい市場競争の視点で捉えると「そうは問屋がおろさない」ことになりそうです。
企業が市場競争に打ち勝つためには、「いつニーズが顕在化するか判らないお客さんを待っているわけにはいかない」からです。

それゆえ、「御用聞き営業」から脱却し「ソリューション営業」という新たなスタイル転換が求められると言うわけです。

ソリューション営業への手法転換とは?

では、ここまでお伝えしたことを一旦まとめてみましょう。

  • ソリューション営業を理解するために「御用聞き営業」と対比させること
  • 御用聞きの構図から、主体は「お客さん任せ」であること
  • そのため、売り手側のスタイルは「受動型」になっていること

このようなことから、今日の激しい市場競争の中で戦っている企業において「御用聞き営業スタイル」で勝ち残るのは容易なことではありません。

「御用聞きから脱却せよ!」
多くの企業トップが営業部門の課題として、このフレーズを打ち出しているのも事実です。

では、「~脱却せよ!」とは、何を意味するのか?
これは、まさしく「ソリューション営業に転換しなさい!」と言っているのです。

ソリューション営業へ転換させる第一歩は、「御用聞きからのパラダイムシフト」です。つまり、「受動型」から「能動型」へ、「待ち」から「攻め」への思考転換を図ることにあります。
もう少し簡潔に解釈するとこうなります。

  • 御用聞き営業は、お客さんのニーズが顕在化してこそ成立する手法
  • ソリューション営業は、ニーズを顕在化させて成立させようとする手法

では、「ニーズを顕在化させて成立させる」とは具体的にどのようなことなのか、その思考プロセスを見てみましょう。

【仮 説】
「おや、これって大丈夫なの?」or「これ、お客さんは気づいているのかなぁ?」

【検 証】
「ちょっとお客さんに聞いてみよう」

【確 証】
「やっぱり気づいていなかった」or「気づいてても意識していないようだなぁ」

【提 起】
「じゃあ、もう少し重要性を教えてあげよう!」

【顕在化】
(お客さん)「これは、何とかしたほうが良さそうだね」

このプロセスを参考に、前出の「酒屋のお兄さんのケース事例」でソリューション営業スタイルに物語を転換してみるとこうなります。

酒屋さん:「奥さん!何か入用ありますか?」
お客さん:「う~ん、今は特に間に合ってるわ~」
酒屋さん:「そうですか~、わかりました」 ← (ここで終われば御用聞き)

(ここから、酒屋さんのソリューション営業に突入!)

(仮説)「ん?そういえば最近地震が多いけど、万一の非常食とか大丈夫のかな?」
(検証)「ちょっと聞いてみるか!」

酒屋さん:「奥さん!最近特に地震が…」(検証中)
お客さん:「う~ん、考えたことはあるけど、何もしてないわ~」(確証)
酒屋さん:「そうですか~でも万一、~な事態になったらどうします?」(提起)
お客さん:「ちょっと心配よね~、どんなものを常備したら良いのかしら?」(顕在化)

(ここから、提案営業に突入!)

酒屋さん:「おすすめのセット品をいくつかお持ちしますね~」…続く

このように、酒屋のお兄さんは見事に御用聞きから脱却し、ソリューション営業スタイルに転換を果たしたと言うわけです。(パチパチ)

ソリューション営業の真髄とは/まとめ

これまでお伝えしましたように、ソリューション営業は御用聞きとは違い、お客さんのニーズを顕在化させ、需要機会を創出させる「攻め」の営業手法であることがご理解いただけたかと思います。

そのための思考転換を図るためには、「仮説⇒検証」が不可欠な要素となります。それが「御用聞き営業との決定的違いである」と言っても過言ではないでしょう。

当社においても「ソリューション営業の重要性」は常に発信して唱えておりますが、実践できる営業パーソンはまだまだ少ないと言うのが正直なところです。

そう言った意味では、今後も営業部門を強くするためのキーワードは、まさに「ソリューション営業力を身につけること」なのかもしれませんね。

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